歪みゲーム
私の目からは、涙が溢れた。
何年ぶりだろう、本気で泣いたの。
こんなに自然に涙が流れたのは、あれ以来。
私の頭の中に、楽しかった思い出が蘇る。
“ヨウー。俺、今日オムライス食べたい”
“ぷ。オムライスだって。まひろお子ちゃま~”
“お子ちゃま~”
“んだと!?まあみもましろも、オムライスの良さを分かってないんだ!”
“もう20歳なのにね、まひろ”
“もう成人者なのにね、まひろ”
“おい、そんな目で見るなよー。照れるだろ?”
“………”
“………”
“ちょ、冷めた目で見ないでっ。…もういいし!ヨウ、大人の食いもん作って!”
“え、オムライス食わないの?作っちゃったよ”
“さすがヨウだ!ヨウだけだよ、分かってくれるのは”
“僕もオムライスの良さ分からないけどね”
“ヨウまで…”
“大丈夫だよ。まひろさん。俺は好きだよ、オムレツ”
“本当かユウ~!って、オムレツかよ!なんだ、ちょっと大人の食べ物じゃねーか!”
“大丈夫、まひろさん。俺は好きだよ、オムライスから卵とったやつ”
“うん、それただのチキンライスだね。ちょっと喜んじゃったからね”
“ま、食べなよ。冷めちゃうから”
“なにが?目?目のこと?目が冷めちゃうって?俺を見る目が冷めちゃうって?”
“それも少々。さ、みんな食べて”
“わーい。オムレツだ”
“ちょ、ヨウ…。なんで俺以外オムレツなの。嫌がらせ?”
“あ、まひろにしてはよく分かったね”
“みんなヒドいっ”
このときは、楽しかったな。
すごく、すごく。