光輪学院シリーズ・九曜の苦悩
上村自身は逃れたがっていたが、どうしても無理なんだと、九門は苦渋の顔で諭していた。

「…何だか微妙に嫌な予感がするわね」

母が珍しく眉を寄せ、複雑な表情を浮かべた。

九曜の母は直感力に優れていた。

九曜のように異形のモノに異常に好かれる体質ではなく、感覚的な面で能力が発揮されていたのだ。

「面倒なことになりそう?」

「ん~。何かその辺が微妙だわぁ。始まっているようで、終わっているような感じ」

首を左右に傾げながら、母は唸る。

「始まっているようで、終わっている? …つまりいろんな意味で手遅れってこと?」

「ああ、そうね。そう言うものだわ」

ポンッと手を叩き、母は嬉しそうに笑った。

「―そんな結論の出し方、するものではありませんよ。九代(くしろ)」

びくっと二人の母子の肩が揺れた。

「おっお祖父さま! 上村のおじさんは帰ったんですか?」

「ええ。それで九曜、ちょっと出掛けるから用意しなさい」

「はっはい…」

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