幕末仮想現実(ﾊﾞｸﾏﾂﾊﾞｰﾁｬﾙﾘｱﾘﾃｨｰ)

公武合体

ん？なんか騒々しいな、朝から。
｢高杉さんっ！｣
高杉さんちに勝手に居候させてもらってからどのくらいたつかなぁ。
久坂さんは京都に行っちゃったらしいし、高杉さんってやっぱりいいとこの出みたいで、屋敷が結構大きいのよね。
勝手に一部屋使っちゃってる、あたし。

｢高杉さんっ！｣
｢何事じゃ｣
あ、あの声は吉田の稔麿さんだぁ。
うふっ。あたしも高杉さんの部屋に行っちゃおっと。

稔麿さんは高杉さんの部屋に入ってくるなり叫んだ。
｢朝廷が、公武合体に寝返りよりましたっ！｣
｢なにぃ！｣

公武合体？
…あたしの記憶が確かなら、前の授業のときに確か公武合体に決まりかけてた朝廷の決断を、長州が 朝廷に取り入って、尊皇攘夷を認めさせて。
それでその内容をちょうど今度の授業で尾崎さんが説明しようとしてるところだったはず。

ん？てことは、また、公武合体になったって事は、長州藩やばいんじゃない？
だって、攘夷つって、もう、外国船撃ちまくっちゃった後だもん。

｢８月１８日、中川宮親王と、薩摩と会津が手ぇ組んで仕組んだそうですっ！朝早うに開かれた朝議で長州を除く在京の緒藩によって決まったそうですっ！｣
｢なに、長州を除くじゃとっ。誰もそれに気づかんかったんかっ！？｣
｢はい、朝、境町御門警護に出勤したところ、武装した薩摩藩士がおって、ようやっと、異変に気付いたそうです｣
｢馬鹿なっ。なんで、そねーな事になったんじゃっ｣
｢攘夷は、天皇の意思じゃのうて、偽勅じゃけー、当然無効じゃと。攘夷のような暴論を朝廷に吹き込んだ長州藩は京都から締め出せっちゅうことに｣
｢何が暴論じゃ、腰抜け幕府がっ。久坂はどうしたっ｣
｢もはや、朝廷との繋がりは回復せんっちゅうて、久坂さんはじめ、皆、こちらに戻りよるそうです｣
｢…そうか｣

…要するに、長州は仲間外れにされちゃったんだ。
出る杭は打たれるって事かな。