幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
この会合が長州藩の藩命でやってる事じゃないって事を世間に見せつけるために
藩邸の門を早く閉めさせる為に、傷を負ってるのに、わざわざ、ここまで来たんだね、稔麿さん…。

高杉さんが言ってた。
戦をするんなら藩の全力をあげてかかる覚悟じゃなけりゃあ、勝てないって…。

まだ、その時じゃないんだ、きっと。

だって、新選組が大活躍する場所だもん、池田屋って。

ドラマ見る度、新選組がヒーローで、
かっこよくってそんなとこしか見てなかった。

やられるのは、小汚い服着た悪いおっさんだと思ってた。

でもっ、稔麿さんは…、小汚いおっさんじゃあないっ!

本当に長州藩を大事に思って、日本の未来を考えてる、素敵なお兄さんだっ。

死んじゃだめよっ。
池田屋なんかに戻っちゃダメっ!

傷ついてるのに、走らないでっ。

池田屋なんかに戻っちゃダメっ!

ダメだって!ああ…、稔麿さんの腕が掴めないっ…。

誰か止めてっ!

中に入っちゃダメっ!
稔麿さ〜ぁん!

「うぉりゃぁっ!」
「総司、後ろだっ」
「っ!」
カシャンっ!カシャンっ!カシャっ!ずばっ!
「うっ!」
ずぼっ!
「ううっ!…」
ドッ!ガタガタっ!ばた…。

っ!
稔麿さぁああああーんっ!!!

「桂はいないかっ!桂を捜せっ!」

………ひっく、…ひっく…。
…稔麿さん…。

高杉さん…、稔麿さんが、稔麿さんが…、死んじゃったぁ…。
ああーんっ!あーんっ、あんあんあん…。
沖田総司のバカヤロぉぉ…。
「よしっ!引き揚げだっ」

…どうして、稔麿さんは戻って来たんだろう。
あのまま、藩邸に残っていれば、助かったのに。
でも、それじゃ、仲間を裏切る事になる…。
稔麿さんは、あの状況でも、長州藩も、仲間も、両方裏切らなかった。
…凄い人だ…。
この時代の人が皆、そうなのかは、わからない…。

でも、こういう人に、…稔麿さんに、逢えて、よかった…。
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