幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
「ここを出る、支度せい」
「え?今からですか?」
「そうじゃ」
「どうして?」
「説明は後じゃ。急いで支度しろ。裏口で待っちょく」
「あ、はいっ」
どうしたんだろ。
何がなんだかさっぱりわかんない。
でもなんか、神妙な声だったから、またなんか、大変な事が起こってるんだって事はわかる。
とにかく言われた通り、急いで支度しなくっちゃ。
あ〜あ、折角寝る準備バッチリだったのに。
疲れたなんて言ってる暇なくなっちゃった。

よし、えっと、裏口だったよね。
「織田、こっちじゃ」
あ、伊藤さんもいる。
「ほら、乗れ」
「はい」
よいしょっ。
「行くぞ」
うわぁ。いきなり走らないでよぉ。
何回乗っても馬はイマイチ座り心地が良くないんだから。
しっかり高杉さんにつかまっとかなきゃ。
ところで。
「どこに行くんですかっ」
「高千帆に行く」
「たかちほ?どこですか?」
「すぐ近くじゃ」
「どうして?」
「僕らは、狙われちょる」
「狙われてる!」
やっぱり、高杉さんやりすぎたんだよ〜。
「イギリス人に、ですか?」
「違う、長州人にじゃ」
「長州人にー?」
なんで、なんで、なんで?
なんで長州人の高杉さんと伊藤さんが、長州人に狙われてんのよぉ。
ん?てことは、ひょっとして、一緒に逃げてるって事はあたしも長州人に狙われてる?
ひぇ〜!あたし、殺されたくなーいっ!!

しばらく馬で走って高千帆に着いた。
ここには、あたしたちをかくまってくれる農家が用意されていて、あたしたちは裏口から入って、少し気持ちを落ち着けた。
「つまりじゃ」
高杉さんがやっとあたしの謎に答えてくれる。
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