幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
「とにかく、とりあえずここは安全じゃ。今日のところは、もう休め。織田も、伊藤も疲れちょるじゃろ。僕も横になる」
横になるって、そんな、男の人が二人もいる所で、あたしに寝ろって言うのぉ?
別の意味で危険だわっ。
「あ、織田」
「はい」
やっぱり、あたしの為に、他の部屋に行ってくれるのかな。
「行儀よく寝ろよ。僕を蹴らんようにな」
「…はい」
もぉっ、あたしのこと、全然女だと思ってないんだからぁ。
まぁ、確かに、色気のない男の格好してるけどさ。
だけど、なにも、二人とも、横になったとたんに寝ちゃうことないじゃない!
ちょっとは意識してよねっ。いじいじ…。
かと言って、一人で他の部屋に行くのも怖いし…、ま、いっか、あたしも寝ちゃおっと。

それにしても、長州の中で、時代の流れを見抜いてる人って、ここにいる高杉さんと、伊藤さんと、あと下関にいる井上さんと、京都で会ってあれから行方不明らしいけど、桂さん、この四人しかいないみたい。
あ、あと、商人の白石さんね。

今は攘夷だなんて古いこと言ってる時じゃないのよ。
それがわかってるから、高杉さんだって、気は進まなそうだったけど、正使になったんじゃんねーっ。
だのに、なんだぁ?
一体、長州の役人ってのは、どんな奴なのよっ。
攘夷家に脅されて、あれは高杉さんたちが勝手にやったことだって言っただぁっ。
ふざけんじゃないわよねっ。
もう、長州なんかにいたくないよぉ。
ああ、元の現実に戻って、平和に暮らしたい!
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