幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
第一次長州征伐
四国連合艦隊の方はなんとかなったけど、長州征伐にやってくる幕府軍の方をどうするかで、長州藩は大いにモメてる、らしい。

おかげで、高杉さんの機嫌の悪いことっていったら。
「織田っ!」
ほら、きたっ!
「はいっ!」
木刀持って、庭へダッシュっ!
「構えろ!」
「はいっ!」
「来いっ!」
「たぁーっ!」
カンっ!カンっ!カンっ!バシっ!
「痛ーい」
「脇が甘いっ。死にとうなかったら、しゃんとせいっ!」
「はいっ!」
あ〜、痛っ。
高杉さん、もうちょっと手加減してよ〜。
実は高杉さん、こう見えて、伊藤さんから聞いたところによると、向かうところ敵無しってぐらい強いんだそうで。
最近、いらいらしているときは、あたしを相手にいつもこうやって木刀振り回してる。
高杉さん曰く、
「織田が、奇兵隊として出陣したときにとりあえず自分の身ぐらい守れるように」
だそうだけれど。
どう考えたって、高杉さんの憂さ晴らしの相手にされてるとしか思えないっ。
バシっ!バシっ!
「痛〜い!!」
「高杉さん」
あっ、伊藤さんだっ。ラッキーっ!救いの神だっ。
「よし、今日はこれまでだ」
「ありがとうございましたっ!」
ふぅ。
「高杉さんっ」
「こっちじゃ、伊藤」
玄関の方からあたしたちのいる庭の方へ伊藤さんが駆けてきた。
「高杉さんっ、俗論派が、益田右衛門介、福原越後、国司信濃の三家老に蛤御門の責任を取らせて、切腹させましたっ」
「なんじゃとっ」
「幕府に全面降伏っ、恭順するとっ」
「馬鹿野郎どもがっ!」
バシっ!
っ…。高杉さん、竹刀地面に叩きつけちゃった。
よくわかりませんが。
全面降伏ってことは、戦にならないってことかな。
ってことは、あたしも、出陣しないですむってことで、従って、高杉さんに、もうしごかれないですむ?
ヤッターっ!

けど、なんか、高杉さんも、伊藤さんも、難しい顔しちゃってる。
高杉さんなんて、こめかみがピクピクしちゃってる感じだし。
なんで、全面降伏が『馬鹿野郎』なんだろ?
戦にならなかったんだから、いいじゃん。
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