幕末仮想現実(ﾊﾞｸﾏﾂﾊﾞｰﾁｬﾙﾘｱﾘﾃｨｰ)

｢外国…｣
｢今、長州は日本中を敵にまわしちょる｣
｢…｣
｢日本を変えるには、先の見えちょらん幕府とそれにに従っちょる奴らに、その長州が勝つしかないんじゃ｣
｢…そんな事、出来るんですか｣
｢わからん｣
｢え？｣
｢出来るかどうかは、やってみんことにはわからん。…じゃけど、例え屈辱的な方法だろうと、どんな手段を使おうとも、やり遂げんにゃならんのじゃ｣
｢…｣
｢その為には、まずは藩論を統一する必要がある｣
｢藩論を、倒幕に…｣
｢そうじゃ、倒幕じゃ｣

高杉さんの目。
本気だ。

この四面楚歌の長州藩にいながら、本気で、幕府を倒すつもりだ。いや、幕府に逆らってきた長州だからこそ、日本を変える事ができると信じてる。

授業で習ってなくったって、江戸時代が終わって明治になる事ぐらい、あたしだって知ってる。

高杉さんのこのやる気がそのまま倒幕になるのかどうかは、知らないけど…。

｢藩論を倒幕にするためには、俗論派と一戦交えることになるじゃろう｣
一戦交える…。
｢どうする、織田。さっきも言った通り、今、長州に幕府を倒そうなんて考えちょるやつは殆どおらん。それでも、僕と共に戦うか、それともこのまま、俗論派に従うか。織田の好きな方を選ぶがええ｣
…。
｢…あたしは…。あたしは、高杉さんと共に戦いますっ！｣
｢…そうか。戦ってくれるか｣
｢はいっ｣

どこがどうなって、明治になるのか、予習しとけばよかったけど、してなかったのも、あたしの運命。

高杉さんが、進もうとしている道が本当に正しいのかも、わかんないけど、あたしは高杉さんについて行く。
高杉さんの時代を見つめる瞳が好きだから。

未来の日本が外国に乗っ取られないように、日本を守る為の戦いの始まり…。

稔麿さんや、久坂さんの死を無駄にしないように、あたしは高杉さんと共に戦う道を選びたい。

今、この現実から、抜け出す事が出来ないのなら…。