幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
回天義挙
あたしは高杉さんと一緒に、奇兵隊が創設された白石さんの家に来てる。
「高杉さんの思う通りにやってください。私は全面的に援助させていただきます」
白石さんは、相変わらず、高杉さんの強い味方みたい。
「織田さん」
「え?あ、はいっ」
「歳は幾つになられますか」
「十八です」
「十八ですか」
白石さんはにっこり笑いかけてくれた。
「織田さん、人生は一度しかありません。悔いの残らぬよう、懸命に生きられることです。時代に流されるのではなく、自分の信じる道をしっかり生きていくことです。ここにおられる、高杉さんのように」
あ、高杉さん、なんか照れてる。
苦笑いしちゃって。
「はいっ。高杉さんのように、懸命に生きますっ!」

それから、あたしたちは場所を移して、高杉さんのもと、作戦会議を始めた。
「功山寺を拠点としようと思うちょる」
高杉さんは地図の上に書いてある『功山寺』をぐるっと棒で囲むように指した。
いよいよ、俗論派との戦いが始まるんだ。
ん〜、わかってた事とはいえ、なんか、緊張してくるぅ。
「しかし、高杉さんっ、我々だけでは、少なすぎます」
「…」
そう、伊藤さんの言う通り。
あたしも、そう思う。
だって、高杉さんの挙兵について来たのって、あたしと、伊藤さんと、伊藤さんが率いてる隊の人たち含めて、わずか八十名足らずなんだもん。
「赤根さんがためらっちょられるけぇ、諸隊がついてこんのじゃ」
どうも、奇兵隊の幹部たちが、この挙兵には反対らしい。
どうやら、それが、高杉さんの誤算だったみたい。
奇兵隊は高杉さんについ来てくれると思ってたみたい。
だけど、噂によると赤根さんは俗論派に取り入ってるとか。
つまり、最早、あたしたちにとって、敵。
それで、奇兵隊が参加しないし、今は、俗論派の勢力が絶対的に強いって事で、なかなか人が付いて来ない。
「…。伊藤、奇兵隊の屯営へ行くぞ」
「奇兵隊の?」
「そうじゃ。織田も来いっ!」
「あ、はいっ」
何なの、急に。
「伊藤さん。高杉さん、何やる気なんでしょうね?」
「さぁのう。あの人のやることは、ときどき僕らの想像の範囲を超えるからな」
ほんと、ほんと。

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