幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
…現実
「織田…、オダ…」
んん?
「オダ…、オダメ…、オダメイ…」
んんん?
「オダメイっ、オダメイっ」
なになになに?
ああ、頭がフラフラ…。
「っ!うわぁーっ!」
「オダメイっ、急に叫ばないでよっ」
「びっくりするじゃない」
へ?
「の、紀ちゃんっ!?数衛っ!?」
へ?へ?へ?
「高杉さんはっ!?」
「んもぉ、なに寝ぼけてんのよぉ」
「ね、寝ぼけてる?」
「もう、日本史終わっちゃったよ」
「え?」
日本史が終わった?
あ、目の前に広がる深い緑は、関門海峡じゃなくって、黒板だ。
…それに、紀ちゃんと、数衛がいる…。
って事は、あたし、元の現実に戻ってきた?
「オダメイ、熟睡しちゃってたもんね」
「熟睡?違うわよっ、あたし、長州に行ってたの。幕末の長州にっ」
「…完全寝ぼけてるわ、こりゃ」
「寝ぼけてなんかいないってばっ。ほら、二人が言ってたじゃないっ。もう一つの現実、あの、仮想現実って、そうっ、バーチャルリアリティーっ!」
「…あのね、オダメイ。紀ちゃんが言ったでしょ。バーチャルリアリティーってのは、最先端の科学を駆使した画期的なコンピュータの成せる技だって。そんな、ほっぺに教科書のあと付けてるだけじゃ見れないの」
「…うっ。でもっ、本当に長州に行ってたんだもんっ。あ、京都にも行ったっ!そうっ、蛤御門で右肩バキューンって撃たれてっ!ん?赤いチョークが付いてる…」
「それは、尾崎さんが『織田、起きろっ!』って、投げつけたの。命中したのに、オダメイったら、『んん?』とか言って、ちょっと肩さすったかと思うと、またそのまま寝ちゃうんだもん。尾崎さん、呆れてたよ」
「あの時が丁度、蛤御門のとこやってる時だったよ、そういえば」
「…」
あたし、寝てただけなの?
もう一つの現実に入ってたんじゃないの?
「あれなんじゃない?ほら、幕末の長州に行ってたんでしょ、オダメイ」
「う、うん」
「睡眠学習よ、それ」
「睡眠学習?」
「そ。尾崎さんの声、おっきいからさ、何となく聞こえてて、夢に見ちゃったのよ、きっと」
「夢?」
あれが、全部…、夢?
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