僕の愛した生徒
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太陽が“今日”という日の勤めを終えようとしている。
屋上に長く伸びる二つの影。
校庭から野球部の声だけが響いている。
「秀……
今までありがとう。
ばいばい」
きっと、これが
君が僕の名前を呼ぶ最後になるのだろう。
君は今にも泣き出しそうに微笑んで、
背中を向けた。
僕は去っていく君の背中を
ただ見つめる。
気づかなかったよ……
君の背中が
あの頃よりも大きくなっていた事
一人この場に残された僕は
静かに目を閉じる。
奈菜……
僕は君を
本当に愛していたんだろうか?
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