僕の愛した生徒


「じゃあ、奈菜は高校を卒業したらどうするんだ?」

「卒業したら?」

「進学するの?それとも就職?」


これに少し考えてから奈菜は答えた。


「秀はどっちが良いと思う?」

「奈菜?」


奈菜は“なに?"と首を傾げる。


「奈菜の将来なんだぞ?」

「そんなこと分かってるよ。
私は秀と一緒にいられるならどちらでもいいよ」

そう僕に笑顔を向ける奈菜。


僕はそんな風に自分の将来を僕に委ねようとしている奈菜に呆れ、

奈菜に回していた腕を解いて


「自分の将来の事だぞ?
もっと真剣に考えろよ!」


思わず語気を強めてしまった。


それに驚く奈菜。


「秀、どうしたの?

私はただ…秀とずっと一緒にいられたら、それだけでいいよ?

それじゃダメ?
そう思うのはいけない事?

秀はずっと私とはいられない?」


奈菜の顔は歪み瞳が震えていた。


「そうゆう事じゃない。
奈菜の人生なんだぞ?
僕がどうしろなんて言えない。

でも、奈菜に進みたい道があるなら応援するし、サポートもしていくつもりだよ?」

「それは先生として?
それとも……」

「両方かな」


奈菜は“そう"と呟いて俯いた。


僕はその姿を見て

あの日の藤岡さんの言葉の意味を理解した。



“僕が奈菜の将来の妨げになる"



こうゆう事だったんだな。


僕が奈菜の傍にいると、奈菜をダメにしてしまうのか?


僕のせいで……


やはり、今は別れるべきなんだろうか?



僕は俯く奈菜を見つめながら、
寄せては返す波の音を聞いていた。
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