僕の愛した生徒
あれから
僕は奈菜との事をどうすべきか
ずっと考えていた。
本当はどうするべきなのか…
知っている。
でも、僕はどうしてもその答えを導き出したくは無くて、
正解があることに気づかないふりをしていた。
そのまま
季節はまた変わる。
僕たちがガラス越しに見上げる空は低くなり、
紅葉していた桜の木も、今ではすっかり葉を落としていた。
「ねぇ、秀。
ちゃんと聞いてる?」
「ゴメン、何だったかな?」
僕が苦笑いを浮かべると
「三回目だよ?
何度も“秀”って呼んでるのに気づかないんだから」
奈菜はそう言って頬を膨らませ、
ハンドルを握る僕を見た。
「ごめん、考え事してた」
「秀、最近それ多くなったよね。
何かあったの?
仕事、大変?」
奈菜は心配そうに僕を覗き込む。
奈菜、ごめん。
今は何も言えない……
「いや…もうすぐ期末テストだから、どんな問題にしようか考えてた」
僕は仕事を言い訳にしてその場を繕った。
「また?
本当にそれだけ?」
訝る奈菜に僕は
「本当にそれだけだよ。
テストを作るのも簡単じゃないんだぞ?
で、どこまで話していたかな?」
と、話を逸らした。