僕の愛した生徒
「私、髪型を変えようかなって。
ずっとストレートのロングだったでしょ?
だから、少し切って軽くパーマでもかけてみようと思うんだけど
どうかな?」
奈菜はふわふわした笑顔を僕に向
けながら“このくらいにするの”
と、肩より少し低い位置で、髪を両手で束ねて見せた。
そのくらいの髪の長さで
しかもパーマをかける?
その髪型は……
偶然にも怜香と同じ。
そんなの……
「ダメに決まってるだろ」
「え~なんで?
可愛いのに」
そう言って奈菜は口を尖らせた。
「パーマは校則違反だろ?」
「でも、みんなかけてるよ?
私もかけたい」
「みんながかけていても
奈菜はダメ!
僕が傍にいる限り、校則違反はさせないよ」
「なによ、こんな時だけ先生になるなんてズルい。
秀が先生じゃなかったら良かったのに」
奈菜は拗ねるように話して、また口を尖らせた。
僕はそんな奈菜をあやすように
片手を伸ばして頭を撫でる。
僕が“先生”じゃなかったら…か
そうだな……
そうすれば、僕たちはもっと簡単だったんだろうな。
当たり前の事を当たり前に堂々と出来て、後ろめたいことも何もない。
今ある幸せを躊躇う必要なんて
ないんだから……
菜奈、ごめんな。
僕は菜奈の右手を握った。