僕の愛した生徒


僕は着替え終わったばかりの奈菜を抱き寄せる。

「奈菜、心配かけてごめんな」


奈菜は僕の腕の中で小さく首を横に振って


「心配なんかしてないよ。
だって、心配することなんて……

何もないよね?」


僕の胸に顔をうずめて
そう呟いた。


僕は奈菜の髪を撫でる。

「秀?
私たち、これからもずっと一緒に居られるよね?」


音も光もない空間で

僕の腕の中で静かに聞いた奈菜は微かに震えていた。


僕は奈菜を抱きしめる腕に力を込める。


そこから伝わるのは

奈菜の温度と交じり合う二つの鼓動。



「一緒に居られたらいいな?」



今の僕はこんなことくらいしか言えない。

奈菜を安心させてやれる言葉なんて見つけられなかった。



「そうだね」


奈菜は僕を見上げ儚く微笑んだ。




奈菜……

もし、僕たちがもっと違う形で出会っていたなら、迷わず

“一緒にいよう”

そう言えるのにな。

奈菜を不安にさせることも無かったのに。


なんで僕たちは

男と女である前に先生と生徒なんだろう。




僕が奈菜の髪を撫でながら

僕たちは見つめ合う。



僕はこんなにも奈菜を……



僕は合わさる視線を解くように
奈菜の額にキスを一つ落とし


背中に回した腕をそのままに、
しばらくお互いの温度だけを確かめ合った。
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