僕の愛した生徒
それからも
僕は心の片隅で奈菜と会うことに
躊躇いを感じながら、
それでも
どうしようもないくらい奈菜に
会いたくて会いたくて……
奈菜と二人きりになれば
言葉を交わす前に
僕は奈菜を抱きしめてしまう。
この一瞬に永遠を願う。
けれども
会うたび切なさは募るばかりで
苦しさも増していく。
そんな日々の繰り返しだった。
そんな中、
昼休憩に廊下を歩いていると、
窓越しに奈菜が中庭で男子生徒と楽しそうに話をしている姿が目に入り、
僕はその光景に思わず足を止める。
あれは確か、浅野先生のクラスの秋山だったかな?
菜奈は両手でミルクティーの缶を包みながら、秋山に無邪気な笑顔を向けていた。
菜奈はどうして、あいつの前であんな風に笑うんだ?
僕には決して見せてくれなくなった…あの顔で。
それを目の当たりにした僕は不満を覚え、心に渦巻く黒い感情を持て余しながら、その光景をただ見つめていた。
「小野先生」
不意に声をかけられて、その方向を向くと
“何をそんなに真剣に見ているんですか?”と浅野先生が隣に並んで僕の視線を追った。
そして、浅野先生の目も奈菜たちの姿を捉えたらしく
「あの二人、最近、仲がいいですよね。
期末テストが終わったあたりから
二人であんな風によく話をしているんですよ」
と穏やかな眼差しを向けていた。
「そうなんですか」
僕はそう言って微笑んでみるものの、心はざわめいている。
「あいつら付き合っているんですかね?
なんか、青春って感じがして良いですよね。
学生が羨ましい」
浅野先生はそう言い残して、
僕の隣を離れていった。