僕の愛した生徒
しばらくして
僕はハンドルを握り前だけを見つめたままで、ふと思い出したように奈菜に尋ねる。
「そういえば、このごろ秋山と仲がいいみたいだな?」
「秋山君?
仲が良いってゆうか…友達だからね。彼、凄く面白いんだよ」
奈菜はそう話した後
秋山がどう言ったのだとか、
こんな事をしていたなど
秋山とのことを楽しそうに僕に話して聞かせた。
そして
話の所々で“面白いでしょ?”と僕に共感を求めるが、
正直、そんな話は面白くないし、
聞かされて楽しいはずはない。
だから僕は奈菜の話に思わず
“へぇ、そうなんだ”
とそっけない返事をしてしまう。
そして話の途中で
「学生同士は楽しそうでいいな」
と、当て付けのような言葉が僕の口からは飛び出す。
これに奈菜は話を止めて
“ごめん”と申し訳なさそうに呟いた。
再び車内にはFMから流れる音楽だけが伝わり広がる。
僕は車を少し広めの路肩に停め、
ハザードランプを点けると直ぐに
素早く僕と奈菜のシートベルトを外して
僕の方に顔を向けた奈菜を
いつもよりも強引に引き寄せて唇を奪った。
僕たちの乗った車を追い越す車や対向車のヘッドライトが
閉じている瞼を明るくするが
そんなこと構わない。
今は奈菜を感じていたかった。
僕だけの奈菜を……
奈菜は少し苦しそうに僕の胸を押す。
それでも僕は離そうとせず、
逆にキスを深めていこうと、奈菜の口に舌を侵入させようとするが
奈菜は口を固く閉ざし、それを許してくれなかった。
仕方なく僕は一旦唇を離し
“力を抜けよ”と奈菜に言うが、奈菜は首を大きく横に振る。
「今日の秀、なんか変だよ?」
僕の態度と裏腹な奈菜の平静な声。
僕はそれに苛立ちを感じながら
「いつもと変わらないよ」
そう言って再びキスをしようとした。