僕の愛した生徒
君が教えてくれたこと


奈菜と別れて一週間。


僕は奈菜と出会う前の生活に戻り

心に重くのしかかっていた何かから解放され、なんとなく身軽な毎日を送っていた。

しかし、未だ残るその欠片が僕に違和感を与え、晴れ晴れとすることはなかったが

それでも、苦しさや辛さは消えていた。




それと同時に、学校では奈菜とも普通の先生と生徒に戻っていた。

とはいえ、もともと学校では、必要なこと以外を話すような僕たちでは無かったから、何も変わらない。

廊下ですれ違えば挨拶をする程度。


でも、HRや英語の授業など、僕たちが必然と顔を合わせるような時、

奈菜は僕たちが付き合う以前のように、

いつも窓の外ばかりを眺めていた。


でも、僕はそれでいいと、あえて指摘することはなかったが、

小テストの時などには、机間巡視の際に、そんな奈菜の机の端をトントンと指で叩き、

目の前の課題に集中するように注意を促すこともあった。



そんな時の奈菜は、僕のことを子犬のような目で見上げ、

僕が微笑みかけても、表情をピクリとも動かさず、俯いて淡々と課題に取りかかる。



僕たちが付き合っていた頃と大きく変わったことがあるとすれば、

それは


奈菜があの日から

僕に少しの笑顔も見せなくなったこと……
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