僕の愛した生徒

その後で再開した授業は
異様な空気が全体を包み込み、

生徒たちは声を潜めて話をしていたが、それにかまわず僕は授業を進めた。



それからも、僕は奈菜の顔を見るだけで苛々し、

それは日を追うごとに募り、


そして、その怒りの矛先を奈菜へと向けた。



僕はことあるごとに、奈菜を責め咎める。


スカートの丈が短いだとか、
髪の色が明るすぎるとか。

授業やHRでは、話を聞く姿勢が悪いなど、

重箱の隅をつつくように、奈菜のちょっとした粗を探しては、ことごとく指摘した。



でも実際のところ、奈菜はスカートの丈にしても、髪の色にしても普通だ。

それでも、僕はやり場のない自分の気持ちを、教員としてやってはいけないやり方で奈菜にぶつけた。


それに、奈菜は毎回、反論をすることもなく、ただ無表情に僕を見上げて“すみません”と謝る。

しかし、その態度が僕の怒りを余計に煽っていった。



奈菜が悪い訳ではない。

そんなことは良く分かっているし

仕事に私情を挟むこともダメだと知っている。


でも

自分でその衝動を止めることは出来ず、奈菜にそれをぶつけた。

かと言って、怒りは鎮まることを知らない。


もう、どうしていいのか分からなかった。
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