僕の愛した生徒
奈菜の笑顔は、僕たちが出会った二年前と変わらない。
でも、もうそこにあの頃のようなあどけなさはなく、少女から女性に成長している奈菜。
僕は手を伸ばし、僕の隣で、再び桜を眺めている奈菜の手を握る。
奈菜を見ると、奈菜は桜を眺めたまま。
穏やかな風が僕たちを包み、奈菜の髪を揺らし、
奈菜の手が僕の手を握り返す。
僕は少し大人に見える奈菜のその横顔を見つめ、
そして、空を仰ぐ。
二年前のあの日
奈菜もあの桜の中で……
僕を見つけてくれていた。
きっと
あの瞬間から
僕たちの全ては
もう始まっていたんだ……
「奈菜?」
「なに?」
僕は、小首を傾げて見上げた奈菜の唇に唇をそっと重ねる。
唇を離すと、風が運んだ桜の花びらの中で、耳まで真っ赤に染めた奈菜が照れくさそうに微笑んだ。
『奈菜…好きだよ』