僕の愛した生徒
そのまま職員室に戻った僕は自分の席に座る。
そして、俯き大きく息を吐くと
「大きなため息ですね。
幸せが逃げますよ?」
突然の声に顔を上げると、
その声の主はHRを終えて戻ってきた浅野先生だった。
僕が浅野先生に
“そんなものですか?”と苦笑いを向けると、
浅野先生は
“そんなものですよ”と笑って、
机の上に、可愛らしくデコレーションしてある封筒を雑に置いて椅子に座った。
「何ですか?」
教科書やファイルが積み重ねてある浅野先生の机には似合うとは言えない、
その存在をアピールしている封筒に目をやりながら僕は尋ねた。
浅野先生も直ぐに何のことか分かったらしく
“これですか?”とその封筒をもう一度手にした。
僕がそれに返事をすると浅野先生は
「生徒からのラブレターですよ」
と呆れるように言い、僕が
「先生はそれをどうされるんですか?」
と問いかけると、
浅野先生は封筒に目を移し
「どうもしませんよ。
だって相手は生徒ですよ?」
あたり前のように話し、
そして更に続けた。