僕の愛した生徒


僕はそんな浅野先生の背中を見送った後、ふと校庭に目を移した。


そこではサッカー部が練習をしていて、僕はその様子をぼんやり眺める。


その中で僕の目がジャージ姿の藤岡を捉え、
視線はその姿を追った。

藤岡はタオルを首からぶら下げ、
口にはホイッスルを加えて、選手達に混じりボールを追っている。

時折、タオルで汗を拭きながら走り回っている
一生懸命な藤岡の姿に、

僕の胸はジワジワと締め付けられた。


僕の口からは大きな息が漏れる。



でも冷静に考えてみれば、

そうだよな……浅野先生の言う通りだ。

先生が生徒に恋愛感情を抱くなんて有り得ない。
あってはならない事なんだ。



藤岡も……

所詮は“生徒”…か……



校庭にいる藤岡が不意に職員室の方を振り向いた。


僕は慌てて俯く。



藤岡からは僕が見えるはずないのに、僕は何をやってるんだ?



僕がしばらくしてから顔を上げると、そこにはもう藤岡の姿は無く安堵の色を浮かべた。


それと同時に突然、
僕の脳裏を掠めた無邪気に笑う藤岡の顔。



藤岡とのこと……

このままじゃダメだよな。


きちんと話をしよう。



僕はもう一度、

大きな息を吐いた。
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