僕の愛した生徒
「先生、できました」
藤岡は外を眺めている僕に声をかけ、解答用紙を手渡した。
それを受け取ると空欄がある。
僕が腕時計を確認すると、テストを開始してからまだ三十分も経っていない。
「まだ時間あるけどいいの?」
僕が空欄部分を指すと
「はい。
考えても解らないところは解りませんから」
藤岡は表情ひとつ変えずに言った。
なんとなく藤岡らしい。
「そうか。
じゃあ次は英語な」
僕は藤岡の席に英語のテスト用紙を置き、
藤岡に準備ができたのを確認してリスニングのCDを流した。
藤岡はそれを聞きながらメモを書き込んでいき、
CDが止まったところで、
問題に取りかかる藤岡を見て
僕は再び窓の外に目をやった。