僕の愛した生徒
僕は車を止めて、検索をしたホテルに電話をかける。
夏休み最後の週末はホテルもいっぱいで、この大雨のせいとゆう事もあるかもしれないが、どこのホテルも満室だった。
そして、ようやく空室があった六軒目のホテル。
僕は渋々、予約を入れた。
そこは車を走らせて10分ほどのところにあり、
車を駐車場に止めると、二人で大雨の中を走った。
僕は奈菜に濡れるからと、先にホテルの前に降ろそうとしたが、奈菜は“一緒がいい”と車を降りなかった。
奈菜は自動ドアの前に来ると、
鞄からハンカチを取り出して、それを僕に渡そうとする。
「僕はいいよ。
奈菜の方が濡れてる」
「いいの使って?
何でか二枚も入ってるの」
奈菜はそう言って笑い、もう一枚ハンカチを取り出した。
僕がフロントで宿泊手続きを済ませ、それを待つ奈菜とエレベーターへ乗り込む。
「奈菜、部屋のことなんだけど、一部屋しか取れなくてさ」
奈菜は“だから何?”とでも言いたそうに僕を見上げる。
「二つ部屋を取るって言っていたんだけど、ごめん」
「なんで謝るの?私はその方が嬉しいよ。
明日までずっと居られるじゃない」
目を輝かせた奈菜は子どもの顔で
僕はそれに少し安心した。