僕の愛した生徒


部屋に入ってはしゃぐ奈菜。

キョロキョロ見回して
冷蔵庫を開けてみたり、部屋にある戸やタンスを開けて
“ここにこんなのがあるよ”
と備え付けの浴衣を出したり、
カーテンを開けて夜景に感動したり。


僕はそんな奈菜の様子を見た後で


「奈菜、お風呂に入っておいで?
雨に濡れたからそのままじゃ風邪ひく」


そう言った。


「秀が先にどうぞ。
運転も疲れたでしょ?」


お互いに譲らないそうゆうやり取りが少し続き、

僕が最後に
“じゃあ、一緒に入るか?”
と奈菜をからかうと、奈菜はたちまち真っ赤な顔になって
“では、お先です”
とバスルームに向かった。


しばらくすると奈菜は浴衣姿でそこから出て来て、僕と交代する。


僕もシャワーを浴びて浴衣を着る。

タオルを首にかけて部屋へ戻るとソファーに腰を掛けて、ジュースを飲みながらテレビを見て寛いでいる奈菜がいた。



緊張感がまるで無しだな。

でもまぁ、僕的にはその方が助かるけど。



「秀はビール?」


僕が奈菜の隣に腰を下ろすと、
奈菜はソファーを立ち上がり、冷蔵庫を開けながら聞いた。


「ミネラルウォーターでいい」

「なんで?飲んでもいいよ。
内緒にしとくから」



内緒って……未成年じゃないんだけどな。



「そうゆう事じゃなくてさ」


奈菜は首を傾げて僕の次の言葉を待っている。


「飲んだら終わりだ」

「なにが?」

「いろいろとな?
奈菜はまだ知らなくていいよ」


納得したような、しないような表情を浮かべた奈菜は、ミネラルウォーターを僕に手渡した。
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