僕の愛した生徒


ふと時計に目をやると、日付は変わろうとしていた。


「奈菜、そろそろ寝ようか?」


僕がそう言うと、奈菜は寄りかかっていた体を正し、立ち上がってベッドへ向かった。


サイドテーブルを挟んで並ぶ二つのベッド。


奈菜が先にベッドに入り、
僕は空いている壁側のベッドに横になる。



「奈菜、明かりを消すよ?」

「うん。でも真っ暗は怖いから、うっすら点けておいてね」


僕は奈菜の言う通りに照明を調節して、布団に入った。



雨音だけが響く部屋。

雨は弱まったものの、止むことを知らない。



しばらくしても眠れない様子の奈菜は、何度も寝返りをうっていた。


「眠れないのか?」

「うん……
手を繋いで寝てもいい?」


僕がベッドから手を出すと、その手を直ぐに奈菜の手が捕まえた。


でも、宙で繋がれている手は段々とだるくなる。


「ねぇ、秀?
そっちのベッドに行っちゃダメ?」

「ダメ」

「やっぱり、そうだよね」


奈菜は繋いでいた手を離し、布団の中に入れた。


それからも、何度となく奈菜の寝返りは繰り返された。



「奈菜、こっちに来るか?」

「うん」


僕は掛け布団を捲って奈菜を待つ。


そして、静かにそっと入ってきた奈菜に布団を掛けた。
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