ひたなみ
6分ほど歩き駅に到着した
田舎の小さ駅で
電車は40分に1本と、恐ろしく少ない
だが俺は結構気に入っている、なんせ目の前は壮大に広がる海
潮風の独特な匂いが何とも懐かしい気分にしてくれる
周囲は木々がしげり夏に入るこの時期からは最高のロケーションだ

夕方のせいか少し肌寒いが

『いねぇじゃねえか』
『いや、まだいるはずだ』

青野と俺は駅から少し離れた駄菓子屋でジュースを買い、駅を監視
それからしばらくのことだった
俺は数十回目のあくびをしている最中急に服を引っ張られた

『ぐえ!!』
『ほら!来たぞ!』

咳込み涙ぐんだ目で青野が指差す方向を見た


【立てばしゃくしゃく座ればぼたん歩く姿はユリの花】

と言う言葉をご存知だろうか?
気品ある女性の所作を3つの花に例えた有名な言葉
まさに彼女のことだろう。

『はぁ~!可愛いな』
『なっ!思わずため息が出るだろ!』

何でお前が得意気になんだよ?

でも本当に可愛い子だ、子猫とペンギンとパンダとコアラの可愛いさを足しても余裕で勝てそうだ
彼女は駅にあるベンチにちょこんと座り周囲をキョロキョロ見回している
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