これからも君だけ




「男物の香水の匂い」





それはきっと朝陽先輩の香り、いや間違いなく朝陽先輩の香りだ。






朝陽先輩はいつもどこか爽やかな良い香りがしていて、だけどそれは不快になるようなそんなモノじゃなくて





本当に付けているかいないか分からないくらいほのかな香り。






いくら朝陽先輩とくっついていたからといってそれが分かる湊君って一体何者なの。






「さっそく浮気かよ」





「浮気って」





「この前言ったこと忘れたか」





この前言ったこと…それはきっと「お前は俺のだ」と言っていた湊君の言葉。







「でも私達別に恋人でもまだちゃんとした婚約者でもないじゃない。それなのに何で浮気になるの」






浮気だなんて言われる筋合いない。

私にはちゃんと好きな人がいるんだから。






「お前、考えた事無いの?もしもこの婚約をお前が破談にしたら桐谷の会社がどうなるか」






それはとてもズルイ言葉で、卑怯な話で…それを考えなかったわけじゃない。





これは私の事で私の人生なはずなのに…きっとそれは私だけの問題じゃない。





家族に迷惑がかかり、そして会社に迷惑がかかる。そうすると働いている従業員や子会社、さらには桐谷グループを支えている全てのモノの状況が変わってしまうかもしれない…





< 65 / 96 >

この作品をシェア

pagetop