情の濃い死神と幸の薄い僕の話

今まで、顔を伏せていたから気づかなかったけどその男性は黒ずくめだった。


黒い靴
黒いコート
黒い鞄
黒い帽子


男性が持っている傘までもが黒だった。


しかも、今は夏だというのに
着ているのは厚手のコート。


暑くないのだろうか?



そんな疑問が脳裏をよぎったが
きっととても寒がりなんだろうと
無理矢理思い込んで、一人で納得した。




とりあえず鞄を受け取り、
お礼を言おうと口を開きかけたところで
帽子を深く被った男性がフッと顔をあげた。





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