情の濃い死神と幸の薄い僕の話
男性の顔、いや目を見た瞬間
僕は凍りついたように、動けなくなった。
黒
男の目が真っ黒だったのだ。
うつろとか、そういうのではなく、
じっとみつめたら、その目の中に落ちてしまうんじゃないかと思うくらい。
男の目には、何も映っていなかった。
何も映していなかった。
「あ…あぁ……」
突然、例えようのない恐怖が僕を襲った。
体の震えが止まらない。
「どうしたんだい?」
男が心配そうに、僕の顔を覗き込む。
低く、感情のこもっていない声だった。
よくわからないけど
僕は、この男のことがとても恐ろしかった。
今すぐ逃げ出したいのに、体が硬直してしまって動かない。
「ずぶぬれじゃないか。
寒いのかい?随分震えているようだが…」
そういって、男が手を伸ばして僕の肩に触れた。