甘い恋には遠すぎて
しばしの沈黙の後、夏稀は振り絞るような声で
『……嫌いになったの……。』
えっ?キライニナッタ……?
『何?』
思わず聞き返した。
『飽きちゃったのよ!今更ノコノコ現れないでよ!迷惑なのよ!わからないの?』
少し声を荒げてそう言った。
まさかの答えに俺は呆気にとられてしまった。
まくし立てるように夏稀は続けた。
『まさか一臣に本気だとでも思ってたわけ?!笑わせないでよ、遊びよ、遊び。だから今更なんにも言うことないのよ。迷惑なのっっ!二度と会いになんて来ないで!』
キッと俺を睨みつけると、走り出す。
俺は反射的に彼女の腕を掴んで、抱きしめた。
『嘘を……嘘をつくなよ!!』
夏稀の体温を腕の中でしっかり感じながら
きつく、きつく抱きしめた。
俺の腕の中にいる夏稀の温もりだけは以前と変わらないのに……