甘い恋には遠すぎて


しばしの沈黙の後、夏稀は振り絞るような声で


『……嫌いになったの……。』



えっ?キライニナッタ……?


『何?』


思わず聞き返した。



『飽きちゃったのよ!今更ノコノコ現れないでよ!迷惑なのよ!わからないの?』


少し声を荒げてそう言った。





まさかの答えに俺は呆気にとられてしまった。


まくし立てるように夏稀は続けた。


『まさか一臣に本気だとでも思ってたわけ?!笑わせないでよ、遊びよ、遊び。だから今更なんにも言うことないのよ。迷惑なのっっ!二度と会いになんて来ないで!』



キッと俺を睨みつけると、走り出す。



俺は反射的に彼女の腕を掴んで、抱きしめた。


『嘘を……嘘をつくなよ!!』


夏稀の体温を腕の中でしっかり感じながら


きつく、きつく抱きしめた。


俺の腕の中にいる夏稀の温もりだけは以前と変わらないのに……




< 191 / 251 >

この作品をシェア

pagetop