甘い恋には遠すぎて
しばらくその場から動けずにいた。数分なんだろうか?数時間なんだろうか定かじゃない。
辺りは既に真っ暗な闇に包まれていた。
たまにすれ違う人々が、俺の事を物珍しそうに眺めていく。
『一臣さん……』
ふと肩に優しく腕が回された。
誰だ……?
『こんなとこに座ってちゃダメだよ。あっち行こう。』
みや美だった。
俺はいつの間にかしゃがみ込んでしまっていたらしい。
支えられ道の端っこへ連れていかれた。
『ここなら座って平気ですよ。』
促されるまましゃがみ込む。
『カッコ悪りぃな俺…あんま見るなよ……。』
みや美は何も言わず、そっと綺麗に畳まれたハンカチを差し出してきた。
礼を言わずに受け取った。