甘い恋には遠すぎて
『一臣……?!』
その声に振り返ると小さな女の子の手をひいた夏稀がそこに立っていた。
『よかった……』
俺は思わず言葉に出してそう言った。
『どうしたの?!』
夏希は、手にしていた鞄を足元に置き、子供を椅子に座らせた。
『みや美から手紙、受け取ったよ、今日。』
『……そう。私が行ってから渡してってお願いしたのにな。もう読んだ?』
『あぁ、読んだ。』
『そっか……。』
そう言って微笑む夏稀の表示には、この間のような刺々しさはなかった。
『ごめんな、夏稀にばかり辛い思いさせてたのに何一つ気付いてやることできなくて。』
『うぅん。』
『俺さ……今もだけど、まだまだ子供で、お前の事を守るだなんだって言ってたけど、まだ自分の力じゃなんもしてやることできねぇんだ。
あん時は、勢いだけでどうにかなるだろうって馬鹿な考えしてたけど。』