甘い恋には遠すぎて
『……うん。』
『でもさ、お前の事本当に好きだったよ……。』
−きっと今も……−
好きだけど、前とは少しだけ違う好きなんだ。
『うん、ありがとう。私も一臣の事好きだったよ。』
−だった……か。
でもその一言が夏稀の口から聞けて、女々しいけどようやく俺の中で何かに整理がついた気がする。
微笑み合う俺達にもう言葉など必要なかった。
あの時の二人は確かに愛し合っていた。
お互いを真剣に好きだった気持ちには嘘はない。
二人はもう別々の道を歩き出している……。
『夏稀、いろいろありがとうな。どうか元気で!』
涙声になりそうになりながらもそうなんとか言った。
『ありがとう……一臣も元気で。』
微笑む夏稀の顔が少しだけ涙で歪んで見えた。