甘い恋には遠すぎて


いけない、買い物、買い物。いってくると莉奈に声をかけコンビニに向かい歩き出す。


自動ドアを出たところで俺はふと足を止めた。


いや、隠れたと言った方が正しいかもしれない。


みや美ちゃんと一臣が自動販売機の前で何やら話し込んでいるのを見つけてしまったからだ。


−ん、ん、ここからじゃ聞こえない−


俺は二人に気付かれないように、ジリジリと近くの柱の影に身を潜める事に成功した。


チッ……後ろ姿しか見えないけど、なんとか声は拾える距離だろう。


『……で、自分探しの旅は収穫あったの?』


おっ、まだ旅の話しか……って俺は何を期待しているんだか。


『そうだなぁ、自分探しなんてそんなたいそうなことはしてないんだけどさ、いろいろな街へ行って働いて、人と触れ合い、たくさんの人の温かさに触れて……』


俺にとっちゃ何度も聞いた話しだ、そんなのいい、そんなことより!!!


『そうなんだぁ〜。一回り大きくなった感じかね。』




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