時の皇子と記憶の舞姫
<雫の間>



「うっ…翼…っ…どうしてっ…?」


雫の間の中央に、うずくまりながら泣いている女の人がいる。
その人が纏う悲しみが伝わって来て、あたしは思わず駆け寄った。


「大丈夫…?」


彼女に触れた部分から、悲しい想いが流れ込んでくる。




『翼に…会いたい…。』

『私を置いて行かないで…。』

『時間を戻したのに…どうしてあなたは帰ってこないの…?』





「え…?
あなたが時間を…戻した…の…?」


泣いている彼女は、あたしの顔を見つめた。


「あっ…ごめんなさいっ…。
触れると…その人の気持ちを読めてしまう力があって…。
でも…もしかして…あなたが…?」

「翼に…会いたい…。」

「翼さん…?」

「翼に会うために時間を戻したのにっ…!!」

「…そっか…。
あなたが時の使い手ね?」


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