時の皇子と記憶の舞姫
「…あたしの…大切な仲間も…大切な人を失った過去があります。」

「え…?」

「恋人、家族、親友…を…目の前で失っています。
その死は…あたしの仲間のせいじゃなかったのに…みんなは自分のせいだって思ってしまうくらいに…自分を責めてて…。
あたしの仲間の一人に…恋人を失った人がいて…その人もタイムの能力に秀でているんです。
あなたと同じように、時間を戻すことで…彼女に会うことも可能でした。でも…そうしなかった。
そして今…ちゃんと前を見て進んでいるんです。
だから…。」


あたしは何を言いたいんだろう…?
言いたいことが全くまとまっていない。
でも…


「…手伝って下さい。
タイムの使い手が集まれば…戻せるかもしれないって思うんです。
少なくとも…道は開けると…。」

「私…の力は…弱い…のに…。」

「強さは関係ないです。
あなたの魔力が軸になってると思うんです。
あなたが時を戻そうと魔力を使えば…もしかしたら…。」


彼女の魔力に触れて…彼女の魔力がリターンを使ったことが分かって…
彼女の力が暴発したってことも分かった。

彼女には暴発してしまうほどに…秘められた魔力がある。
…ある意味…あたしと一緒。
魔力を使いこなせていないだけ…。


「…やりましょう、香澄さん。
あなたの魔力で…時空の歪みは直せます。きっと。」


あたしが差し出した手を、香澄さんはぎゅっと握ってくれた。



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