時の皇子と記憶の舞姫
* * *


「よしっ…!!繋がった…。」

「マジかよ…。」

「やっぱな。お前なら出来るような気がしてた。」

「ありがと、蒼刃。」


蒼刃が不器用に頭を撫でてくれた。


「氷泡星来ってすげぇ…。」

「そんなことないよっ!!とりあえず…雷の力はもうゼロと見て間違いなさそうだから…
こっちから時空を開くには香澄さんの力が絶対に必要…。
やって…もらえますか…?」

「……。」

「あたし…力にはなれないかもしれないけど…
香澄さんの背中を押せたらいいなって思ってます。」

「私の…背中…?」

「過去は…やっぱり変えられないから…
どんなに辛い過去があっても…それを乗り越えて生きていくしかないんです。
過去を抱えて生きることが辛くても…翼さんを忘れてしまうことの方が辛いでしょう?」

「……。」



忘れてしまえば…何も思わない。
あたしも確かにそうだったから。

でも…忘れる前の…引き千切られるような想いは確かにあって…。
それが辛くて泣いたこともあった。


「忘れられる痛みは分かりません。
だけど…忘れる痛みは分かります。
忘れるって…辛いことです…とても。
もちろん、忘れられる方が辛いに決まってます。
…香澄さんが忘れてしまったら…翼さんは…本当に失われてしまいます…。
だから香澄さん…。」




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