レンアイ 遊興
はぁはぁと揺れるその華奢な体に声をかけずにはいられなかった。
『傘…ないの?』
すると、彼女はびくりと体を強張らせ、また走り出そうとするから、
『うわ、びしょ濡れじゃん!』
なんて今知ったかのような口ぶりをしてしまった。
『これ使いなよ』
そう言って、今までさしていた真っ黒の傘を差し出す。
『え…でも…』
初めて聞く彼女の声。
しかし、この大雨の中、あまり聞き取れなかったというのが正直な所で。
しかも、髪から滴る雫が邪魔で顔もよく見れない。
『俺は折りたたみがあるから平気。君は何も気にしないでそれをさして帰りな?』
なんて言って、彼女に無理矢理と言えるほど強引に傘を持たせ、その場を立ち去った。