レンアイ 遊興
瞳の先に
◇…つくしの生活
空を見ながらふと考える。
今日みたいな雨の日は思い出すんだ。
「つーくし、何してんの?」
「あ、朱音」
私の前で首を傾げる、間宮 朱音(マミヤ アカネ)は、私の親友と言えるほど、仲がよい友達だった。
「またあの人の事考えてる?」
「えっ、…わかるの?」
私が目を見開くと、朱音は当たり前とでも言うような表情でこう言った。
「わかるよ。あの傘の人でしょ?」
そう、傘の人。
私が中学三年生だった頃。
梅雨は終わり、かんかん照りの夏だった。
学校の帰り道、急にかかってきたお父さんからの電話に出る。
『資料を忘れた。すぐに届けてほしい。お父さんのテーブルの上にある、茶色の封筒だ。いいな?』
そう言われた私は、すぐに家に帰り、茶色の封筒を手に取り、お父さんの仕事場に行った。
今日が初めてじゃない。
仕事場に行くなんて、別に気にするような事でもなかった。
雨が降るまでは。