レンアイ 遊興




ひょっこりオレの顔を覗き込んでくる知美。


「なに〜その怖い顔。クールな海風空が台なしよー」


なんて言ってふふっと微笑む。


オレは眺めていたゴムをポッケにしまった。


いや、しまおうとした。

ポッケに手を入れる瞬間に、手首を知美に捕まれてしまったから。


「なにこれ」


そう言う知美は歩くことも忘れ、表情をなくしていた。


オレは知美を追いて、そのまま歩き続ける。


「知らないよ」


「なっ、知らないってなによ。空のでしょ?」


「違うよ」


「じゃあ誰の?」


「……知らないよ」


正直、これがまだつくしちゃんのかどうかすらわからない状態で。


持ち主を知らないことは本音だった。




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