拾ってください!
やっと私達の順番がきた。


もう座る席は空いてないだろうなとおもいながらバスに乗り込むと、

先に乗り込んでた乗客の人がシロさんを見て固まるのが見えた。




まるで、数時間前の私を見ているようだ・・・。



固まる人は入り口を中心にどんどん増えていき、ついにバスの中は静まりかえった。


そして、シロさんが一歩踏み出すと立っていた人も座っていた人も一斉に端に寄り、綺麗に道が出来た。




こんな光景見たことない。


もうあれだ。モーセみたい。



私達の順番では座れるはずがないのに一番後ろの長いシートに席が3人分くらい空いた。



あぁ、そこのサラリーマンのお兄さんそんなに小さくなって座らなくてもいいのに・・・。


そんなことを思っていると、シロさんはさっさとその空いた席のほうに行き、私を呼んだ。



「成瀬、席空いてるから。早く来い。」



正しくは「空いてる」ではなくて「空けられた」なんですけどね。



呼ばれたのでおずおずとシロさんの元に行くと周りから視線を感じた。


「何者だよ、アイツ・・・。」ってヒシヒシ伝わってくるよ。


なんていうか、私までこんな所に座ってごめんなさい・・・。



バス中の視線を一身に受け、罪悪感で身を縮ませながらそろりと座った直後、外から大きな声が聞こえた。



「あー!!待って待って!!オレ乗るんでー!!」


バタバタと走ってくる足音が聞こえ、扉のほうを思わず見る。



固まっていた乗客たちも同じように扉に視線を向けると、

その声の主は入ってきた。
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