エリートな彼に甘く奪われました
「はい、どうぞ」

シーツに身体を包んで呆然としながら湯気の立ち昇るコーヒーを受けとる。

「ありがとう」

柔らかなコーヒーの薫りに湯気越しに見える彼の笑顔。

まるで映画みたいだわ。

今日も朝から惚れ惚れするほどの綺麗な顔で笑いかけてくれる。

彼の茶色がかったサラサラの髪が朝日に照らされて透けて金色に輝いている。絹糸の様に…。

まるで本当に映画のヒロインにでもなった様な気がしてくる。

彼氏なのよね…。
こんなに素敵な彼が自分の恋人…。
童話の王子様の様な。
信じられない…。

昨日から何度、彼に見惚れて、ときめいただろう。

だけど、まだまだもっと見ていたい。


…はっ、と我に返る。

今、目の前にいるスーツ姿の彼は今まで見てきた『女性社員人気ナンバーワンの浅香さん』だ。

二人きりで過ごしている時には彼の魅力に取り込まれていて忘れがちだったけど、今日からまた会社に行けば昨日と何ら変わりないのだ。

どうしよう、自信がない。









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