エリートな彼に甘く奪われました
あれから、無言で歩き去った彼の後ろ姿が脳裏に焼き付いて離れない。

どうやって辿り着いたのか、気が付くと自分のデスクで目の前には資材管理部の在庫管理費の未処理伝票が山積みされていた。

どうしよう。

呆れて怒ったのかな…。

彼の部署とはフロアも違い仕事中は滅多に顔を合わせる事がない。

このまま会えずに何事もなかったかの様に終わってしまうのかしら…。

今朝の彼のはにかんだ綺麗な笑顔が目に浮かぶ。


また涙が溢れそうになり慌てて上を見て目をしばたかせる。

「どうしたの?やっぱり調子悪い?昨日も途中で帰ったでしょ」

隣の席の木原さんが話しかけてきた。

彼女は昨日、森山さんと言い合っていたうちの一人だ。

私の悩みを聞いたら仰天するだろう。

私は後ろめたい気持ちから目を合わさずに言った。

「ううん、用事があっただけ。…ありがとう、大丈夫よ」

「そう?ならいいけど。
だけど無理しないで。顔色が悪いわ。
少し休んできたら?」

正直仕事が手につかない。

少し頭を冷やして来よう。

「ありがとう、じゃあ御手洗いに」

彼女にそう告げて席を立った。






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