エリートな彼に甘く奪われました
彼に想いを告げたのは社会に出てからの事だった。

彼と同じ会社に入社したのは全くの偶然だった。

彼の勤める会社を知らなくても、彼はよく兄のところに遊びに来ていたし。

彼の本社への転勤と私の入社はほぼ同時期だった。

「愛!」

入社式の会場から外に出た瞬間、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「太一くん!!」

私は驚いて目を見張った。

「驚いたなー、うちの会社に入ったのか~!俺さ、会場係でずっと見てたんだぜ。気付けよー」

そう言って頭をポンポン叩く。

「や、やだ。やめてよ」

慌てて彼の手を払いのけると、彼はじっと私の目を見て、

「しかし、綺麗になったな」

と言って白い歯をきらりと見せて笑った。

彼とは四ヶ月ぶり位で、私は何となく彼への気持ちを整理しつつあったけれど、彼の変わらない笑顔を目の当たりにしてまたしても胸に熱いものを感じた。





< 151 / 236 >

この作品をシェア

pagetop