プラトニック・ラブ
「話そうか」
「え…いや…授業が…」
授業なんて受けたくないけれど、この時ばかりは受けたくてしょうがなくなった。
ここで捕まったらダメだと警告音が響く。
冗談抜きで退学にさせられてしまう。
虚空の誰かに助けを求める。
こんなことになるのだったら、さっきオバちゃんと一緒に行くべきだったと今更ながら思う。
なに悠々と見送ったりしてしまったんだろう。
なに勘違いしてしまったんだろう。
あたしは安全圏にいるわけじゃない。
むしろオバちゃんのときよりも大変危険な状況に陥っている。
「離して…ください」
か細い声でそう呟くけれど、ソイツは聞こえないフリを決め込んだのか、
「俺が後で担任に言っといておくから心配するな」
そう言うだけで離してくれる気配は全くなかった。
「では行こう」
「あの…っ、いや…授業に…出させてください…」
必死の抵抗も虚しく、問答無用で引きずられていくあたしはやはりマリオネットだった。