プラトニック・ラブ
あたしの事を誰よりも知っているお母さんのことだ。
あたしの考えなんてお見通しだろう。
けれど何も言わなかった。
ただ「分かった」そう言ってサインをしただけだった。
それが良かったのかもしれない。
あたしの一度決めた心は、あれから一度も揺るがなかった。
階段を降りる。
ふと視線を横に移すと、ボロいアパートの近くにあるのは似合わない、真っ黒なリムジンが目の端に移る。
あたしは地面に足を付けるとそのリムジンへと向かって行く。
ドキドキ。
この胸の高鳴りは何からくるものなのだろう。
この前はマジマジ見ることができなかったリムジン。
それは電灯のせいじゃない―――自らが光り輝いているようだった。
そんな車に乗る。
これからはあたしが見たことも感じたこともない、未知の世界へあたしは進むんだ…。