プラトニック・ラブ



櫻井グループのお手伝いさんとしてこの方に会ったとき、あたしは心の底から〝コワい〟っと思った。


ある意味で一番関わりたくない人だと思った。



あの冷たくて硬い空気。


滲み出るオーラ。



もう一生触れたくないと思った。



けれど今。


あたしの目の前で口を開けて笑う。



この人は一体誰だ…?



「今回は本当にすまないね」



「…え?」



再びダンボールを持ち上げようとしたとき、社長さんはあたしに謝ってきた。



「不器用な奴でな」



何となくだけれど―――多分迅さんのことを言っているんだろうと理解。



あたしは低くした腰を元に直す。


社長さんは笑い声を止めるとあたしを見て、不安そうな声で訊いてきた。



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