プラトニック・ラブ




人間誰だって恥をかくのは嫌だ。


なんとかしても避けたいと思ってしまう。



「何を作る気なの…?」



「うーんとね、焼きうどんでいいかなーって」



…焼きうどん?!



あたしは無言のまま目を見開いてお母さんを見つめる。


お母さんは首を傾げてハテナを頭上に浮かべている。



おいおいおい。


トップの櫻井グループに〝焼きうどん〟なんかを昼食として出していいわけ?!



それこそ恥ずかしい。


作るのはお母さんかもしれないけど、家族の身にもなってほしい。



「はいはーい、どいてねー」



ボーっとしているあたしを擦り抜けてお母さんはリビングへ向かう。


あたしはそんな自信で満ち溢れているようなお母さんの背中を見つめる。



あたし…出かけてもいいかな。



今すぐにでもここから逃げ去りたい。


リビングに近づきたくない。




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