プラトニック・ラブ





あたしはその手が気になって、なるべく顔が見えないように上目で迅を見る。


と、迅はあたしが視線を上げたことに気づくと、悪戯っぽい笑みをしたまま、



「バレバレだよー。 瑠璃ちゃーん」



なんて、完璧に茶化すようなことを言ってきた。


〝瑠璃ちゃん〟なんて言ってるどころで完璧に馬鹿にされてる。



「………っ」



あたしは唇を噛み締めたまま、声にならない唸り声を漏らし睨みつける。


しかし〝上等じゃねぇか〟みたいな顔で見つめられたあたしが勝てるわけもなく、フイっと先に視線を逸らすことになってしまった。



「ごめんねぇ。 今まで気づかなくってさぁー」



ムカつく。



気に障るその話し方にイライラする。


何もかもスムーズにできてないことからして、薄々気づいてただろって思う。



気づいてたくせに。


分かってたくせに。



「瑠璃ちゃーん?」



あたしはその声にキっと顔を上げると、遠慮なしに叫んだ。



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